月夜の黒猫は、心を攫う


 戸黒さんは、今でもまだ、私の心臓が欲しいのかな。

「とにかく、今日はおれも瑠璃ちゃんの登下校のときに烏丸さんと付き添うよ」

「え、ほんとうに……?」

 私みたいな高校生を守るのに、使い魔が三人体制なんて。

 そんなの、いいんだろうか。

 NWIのほかの任務は……?

 心配していると、何かを察した稀月くんがふわっと私の頭を撫でた。

「瑠璃は何も気にしなくていいよ。わざわざおれ達に付き添うってことは、NWIのほうにも、なにか思惑があるってことだから」

「さすが稀月くん。察しがいいね」

「当然だ。だけど、この前みたいに瑠璃を危険にさらすような作戦はだめだからな」

「わかってる。今回は大丈夫だよ」

「絶対だからな」

 にこりと人懐っこく笑う大上さんに、稀月くんはしつこいくらいに念押しをしていた。

 朝ごはんを食べ終えて、学校に行く準備を整えると、私と稀月くんは大上さんと一緒に烏丸さんの運転する車に乗った。

 それから、いつものように、高校の裏門側の路地で降ろしてもらう。

 いつもなら、そこで烏丸さんはすぐに走り去ってしまうのだけど、今日は私たちが学校に入っていくまで停車していた。

 私たちが授業を受けているあいだ、烏丸さんと大上さんは近隣をパトロールする予定らしい。

「戸黒さんは、ほんとうにこの近くにいるのかな」

「もし来ていたとしても、烏丸さんがなんとかしてくれるから大丈夫ですよ。それに、今日はイヌガミもいるし」

 稀月くんが、私の手を引いて学校へと向かう。

 稀月くんは、五年前に兄のゆーくんを殺されてから、狼の使い魔のことを嫌ってる。だけど、大上さんのことは信用してるんだと思う。

 稀月くんの大上さんに対する口調や態度は少しそっけないし、年下のくせに生意気なんじゃ……って思うこともあるけど。

 狼の使い魔への嫌悪感と大上さん個人を信頼する気持ち。そのバランスの取り方が難しくて、あんなふうになってるって気がする。