「なにしてんだお前」
「この多目的室にもピエロがいないか確認していたんだ」
「……後輩が震えてんだぞ」
「建設的に、そう言ったのは若松だろう?ふたりが慰めているあいだに、俺は室内の物色をする。とても建設的で効率的じゃないか。それともなんだい?ひとりに対し3人のリソースを割かないといけない絶対的な理由でもあるのかな?」
「お前……緊張感も無ければ人間の血も流れていないんだな」
「お生憎様。祥以外のことで俺にそういうのは期待しない方が吉だね」
「ピエロなんかよりこいつのほうがよっぽど悪党だ」
バチバチと交わされる応酬。
普段の軽口とは違う張り詰めた会話に、口を挟むことができなかった。
「わ、若松先輩!橋本先輩!ぼ、僕はもう大丈夫ですので……だからその、あのっ」
「あぁ、すまない日下部くん」
声を上げた日下部くんに対し、お兄ちゃんはパッと笑顔を作り、若松先輩から離れる。
「この部屋にはピエロはいないようだ。次の場所を探そう。まったく、わざわざ突っかかってくる若松よりこの場を諌めようとしてくれた日下部くんの方がよっぽど建設的じゃないか」
お兄ちゃんは若松先輩を一瞥したあと、私に向き直り
「祥、お手を」と本物の王子様のように手を差し出した。
「このサイコ兄貴といると胃に穴が空きそうだ」
ため息をつきながらうしろに続く若松先輩。
日下部くんはオロオロとしながらしんがりについた。
私はそっとを体をひねり
「ごめん、あとで兄にはゲンコツしとく」
と日下部くんに耳打ちした。
大切な友達を無下にするのは、お兄ちゃんだろうと許さない。



