「日下部くん、大丈夫。私だって怖いもん。謝ることじゃないよ。日下部くんなりに動いてくれていたんだよね。ありがとう」
「橋本さん…」
「クラスメイトがほとんど犠牲になって、私すごくショックだったんだ。でも唯一、同じ場所で同じピエロの格好で思い出を共有していた日下部くんが一緒にいてくれてすごくうれしいし心強いの」
むぎゅー!と細身の体を抱きしめる。
「は、橋本さっ」
「がんばろーね!日下部くん!ほら、私たちはピエロなんだから、笑顔笑顔!」
私は自分のほっぺを持ち上げた。
それを見て日下部くんは、うるませた瞳で困ったように、それでも唇を動かし笑ってくれた。
ピエロは怖いけど
今だけは自分がピエロで良かったと思う。
すると、横から若松先輩が「あー…」と気まずそうに入ってくる。



