「う、うん大丈夫…。でも私、一体何が…」
「ピエロに変な機械で気絶させられたんだよ。僕たちも同じ」
そうだ。
日下部くんを庇ったらピエロが近づいてきて
首もとに電気のような刺激と痛みが走って。
それで私は──
「み、みんなは大丈夫なの…?」
日下部くんの言うことが本当なら、みんなも私と同じようにされたというわけだ。
「ぼ、僕はなんともないよ」
「俺もだ。特に問題ない。ちなみにそこのイカレ兄貴はすごかったぞ。アレを3発食らってもピンピンしてやがった」
「だって祥が心配だったから…」
「ピエロも苦労すんなこりゃ」
若松先輩は呆れたように肩をすくめた。
いくらなんでも無敵すぎる兄が一周まわって心配になってくる。
「お兄ちゃん…いつか死んじゃうよ」
「俺は死なないよ。もし死ぬなら祥も一緒」
形のいい唇が頬にふにっと押し当てられる。
「病める時も健やかなる時も──死ぬ時も
お姫様と王子様が離れることはないからね」
麗美に微笑むお兄ちゃんは、私と自身の指を絡め合った。
私はピエロなのに。
この王子が登場するおとぎ話はきっと
正しいストーリーじゃない。
そう思った。



