「おい、若松。祥のこと不細工と言ったね?それに俺の許可もなく腰なんて引き寄せて…。まったく見過ごせないな」
「さっきの今で第一声がそれかよ。
なに見てたんだお前」
一連のくだりを見届けたあと
お兄ちゃんがすぐさま表に上がってきた。
「大鳳くんとの話かい?仲間になってあげればいいじゃないか。俺は君がいなくても全く問題ない。祥とふたりで頑張るよ」
「4人一組つってんだろーが。
日下部忘れんな。ぶっ飛ばすぞ」
「なんて野蛮なんだ。
祥、早くお兄ちゃんのもとへおいで」
「ダメだこいつ。
妹の言葉しか認識できないみたいだ」
お手上げだというふうに私はお兄ちゃんへと引き渡された。
天下の大鳳会長をも言い負かした若松先輩を捩じ伏せるお兄ちゃんに苦笑いがこぼれる。
兄には王様とジョーカーのやりとりなど些末なものに見えていたのだろう。
「祥~。俺の祥は不細工なんかじゃないもんね~」
「自分で選んどいてなんだが、本当にこいつと同じグループでやってくのか…」
でれでれと私とのスキンシップを堪能するお兄ちゃんを見ながら、若松先輩はどこか遠い目をした。
その時、日下部くんが「みなさん!」とこちらへ駆けてくるのが見えた。
「日下部くん!どこに行ってたの?」
「ぼ、僕たちのグループが決まったことをピエロのもとへ報告をしに行っていたんだ。早くしないと大鳳会長みたく勧誘しにくる人が他にも来るかもしれないから…」
「そうだったんだ!お疲れ様、ありがとう」
先輩ふたりが不毛な言い合いをしているあいだにも、後輩の日下部くんは淡々と動いてくれていたらしい。



