大鳳会長の瞳孔が、信じられないとでもいうふうに大きく開く。
「…本気で…言っているのか…?」
王のこめかみに青筋が浮いた。
若松先輩はそれをニヒルな笑いで返す。
「よう、王様よ。お前誰にモノ頼んでんだ?俺はジョーカーだぜ?」
長い両手が広げられ、パープルのスーツがひらりと靡く。
そして流れるように私の腰を引き寄せた。
「?!?!」
「俺は悪党だ。お前みたいなお綺麗な王様に指図されて手ぇ組むなんて真っ平御免だよ」
巻き込まれるとは思わなくてその顔を見上げれば、切れ長の目も私を見下ろしていた。
赤い唇のペイントがにんまりと吊り上がる。
「俺にはこの不細工なピエロがいればそれでいい。あ、あとひょろいピエロと変態王子もついでにな」
そう言って、さらに私との距離を密着させた。
「このぼくの誘いを断るのか?ぼくと組めば勝ちは約束されるも同然なのに?」
「おや、そう言ったはずだが聞こえなかったかな?うしろにいる下僕にでも通訳してもらえよ」
王様はギリリと歯を食いしばり、ジョーカーを睨んだ。
対峙する光と闇。
すごい光景だ。
ここがおとぎの国だと勘違いしそうになる。
「悪党に助けを乞うならもっとよく考えねぇとな。その王冠捨てて、ドブ底まで堕ちてから来るこった」
「……若松、貴様、絶対に後悔させてやる」
「あぁ。楽しみに待ってるよ」
大鳳会長は余裕綽々な若松先輩をもう一睨みすると、深紅のマントを翻して去っていった。



