声の先には
ピエロ──日下部くんが立っていた。
「日下部くん!!無事だったんだね!」
表情は不安げだが、その姿は渡り廊下で別れた時のまんまだった。
感激しておもわず抱きついてしまいそうになる。
そして私と同じ、ピエロの言葉を信じる方の選択をしていたことが嬉しかった。
「わぁぁ日下部くん!日下部くんだ!」
「橋本さんならここに来ると思ったんだ。信じてよかった」
手のひらを握られる。
名前を呼ぶことしか語彙力の働かなくなった私にも笑顔を向けてくれる日下部くん。
ここに来てピエロの顔でこんなに安心するとは思わなかった。
「ねぇ日下部くん。
その…クラスのみんなは…?」
その問いに、日下部くんは目を伏せた。
ざわりとした嫌な胸騒ぎが襲う。
「……あまり聞かない方がいい…かな」
濁された答えがすべてだった。
ああ…そうか。
軽いめまいに襲われる。
受け止めるにはあまりに衝撃が大きすぎた。
みんなは、もう…
「でもいいんだ…僕は気にしてない」
「え?」
それはあまりに小さい呟き声だった。
「ううん、なんでもないよ。僕は橋本さんがいればそれでいい。生きていてくれてありがとう」
すり…と頬同士を寄せられた。
突然のことに固まる私。



