「かわいいか?顔真っ白じゃねーか」
「それは若松も同じだろう?その姿はなんだい?ピエロ?祥とおそろいだったら許さないよ」
「バカ言うな。ジョーカーだよ。
王子様はいいなぁ?煌びやかで」
「ああこれ?午後開催されるはずだった舞台の王子役を任されたんだ。似合うかな?」
ニヒルな態度の若松先輩にも変わらず微笑むお兄ちゃん。
どちらも見た目が派手で強い。
「ほら祥、王子様が迎えに来たよ~」
お兄ちゃんは愛おしそうにおでこをこつんとしてくる。
それからしっとりと私の髪に口づけた。
場違いなほど柔らかい雰囲気を醸し出していて、殺伐とした空気にひとりいるだけでほんわりとしてくる。
「ふふ、お顔が真っ白だろうと俺の妹は世界で一番かわいいお姫様だよ」
「ピエロよりやべぇな。こいつだけ途中参加してきたんじゃねぇの?」
先ほどまでひどい光景を目撃させられた後とは思えないようなお兄ちゃんの態度に不気味がる若松先輩。
諦めてほしい。これが兄だ。
無事お兄ちゃんとも出会えて安堵していると、後ろから肩をぽんと叩かれた。
「は、橋本さん…」



