「……ん?え?どう…なったの?」
まるで長い時間眠っていたみたいに、体を投げ打ってからの記憶がすっぽりと抜け落ちていた。
あたりを見渡すと、たくさんの生徒たちが、私のことを囲むようにして視線を注いでいた。
「間に合ったんだよ、俺たち」
すぐそばから聞こえた声に目を転ずれば、そこにはジョーカー姿の若松先輩がいた。
隣から私を支えるように座っている。
「わ、若松先輩!無事だったんですね!」
「ああ。誰かさんが背後から思いっきり乗りかかってくれたおかげでな?」
にっこり笑う若松先輩の鼻からは一筋の血が流れていた。
あ…もしかして私が飛び込んだその下敷きに…
「す、すみすみ、すみません!!!」
「べつにいい。どちらも必死だったんだ。結果的に間に合ったし、むしろはっ倒してくれて感謝してる」
若松先輩は鼻血を拭いながら言うと、ゆっくり立ち上がる。
「生きててよかったよ、祥」
優しい声音。
ほら、と手を差し伸べてくれる。
命懸けで私を引っ張ってくれた大きな手。
なにもかも若松先輩がいてくれなきゃここまで来られなかった。
「ありがとうございます…若松先輩」
なんだか泣きそうになりながら、その手を取った。



