◇Clown Act◇⇧




「……ん?え?どう…なったの?」



まるで長い時間眠っていたみたいに、体を投げ打ってからの記憶がすっぽりと抜け落ちていた。


あたりを見渡すと、たくさんの生徒たちが、私のことを囲むようにして視線を注いでいた。



「間に合ったんだよ、俺たち」



すぐそばから聞こえた声に目を転ずれば、そこにはジョーカー姿の若松先輩がいた。


隣から私を支えるように座っている。



「わ、若松先輩!無事だったんですね!」


「ああ。誰かさんが背後から思いっきり乗りかかってくれたおかげでな?」



にっこり笑う若松先輩の鼻からは一筋の血が流れていた。


あ…もしかして私が飛び込んだその下敷きに…



「す、すみすみ、すみません!!!」


「べつにいい。どちらも必死だったんだ。結果的に間に合ったし、むしろはっ倒してくれて感謝してる」



若松先輩は鼻血を拭いながら言うと、ゆっくり立ち上がる。




「生きててよかったよ、祥」




優しい声音。


ほら、と手を差し伸べてくれる。





命懸けで私を引っ張ってくれた大きな手。



なにもかも若松先輩がいてくれなきゃここまで来られなかった。



「ありがとうございます…若松先輩」



なんだか泣きそうになりながら、その手を取った。