そもそも私と若松先輩は、お互い逆方向から鉢合わせるように走ってきたのだ。
覚えているかぎりでも、話し合っているときだってずっと来た方向を背にしていた。
つまり、なんの奇跡かお互いが同じ方角を向く瞬間はなかったということだ。
感じ取れるものが合致するはずがない。
「…場所、もしくは方角がヒントということですか?」
ジョーカーの真っ赤なペイントが不敵に吊り上がる。
「一つのエリアに留まっていたお前は天国と地獄のみ聞こえていた。反対に大幅に移動していた俺は進める時空も聞こえる音楽もまばらだった。もう解るな?」
場所、または方角が音楽に紐づいている。
ということなのだろうか。
それなら
「私が聞いていた天国と地獄が時空を歪ませると仮定したら、若松先輩が間隔的に聞こえていた聖者の行進が正解の方へ導く音楽…?」
「そういうことだ。さぁ、今お前が向いている方角へ走るぞ。きっと上手くいく」



