「それになんだそのピエロの人形は。趣味かよ」
長い指がゆっくりと私の胸もとをさす。
「え?」
なぞるように見下ろせば
私の腕の中には、ロッカーで見た2体の
ピエロ人形が収められていた。
「きゃっ?!」
ぎょろりとした4つの目に睨まれ、ピエロ人形を落としそうになる。
なんで?私…ずっと持ってたの?
「えと、あの…これはその…!」
混乱する私の動きに合わせてブランブランとピエロの足が揺れる。
その様子を横目で見ていた若松先輩は、かったるそうにひとつ息を吐いた。
「もういい落ち着け。ずいぶん大事そうに抱かえていたから気になっただけだ。お前自身もよく分かっていないようだし話題を変えよう」
「え、あ、はい…」
そうだけど!そうなんだけど!
ここまで持って来た記憶もないし怖いんだけど!
ピエロ人形を見下ろせばぎょろりと目が合う。
今すぐにでも手放したい気持ちでいっぱいだが、そんなことをしたら最後、呪いにでもかけられそうな気がした。



