◇Clown Act◇⇧



「それになんだそのピエロの人形は。趣味かよ」



長い指がゆっくりと私の胸もとをさす。



「え?」



なぞるように見下ろせば


私の腕の中には、ロッカーで見た2体の
ピエロ人形が収められていた。



「きゃっ?!」



ぎょろりとした4つの目に睨まれ、ピエロ人形を落としそうになる。


なんで?私…ずっと持ってたの?



「えと、あの…これはその…!」



混乱する私の動きに合わせてブランブランとピエロの足が揺れる。


その様子を横目で見ていた若松先輩は、かったるそうにひとつ息を吐いた。



「もういい落ち着け。ずいぶん大事そうに抱かえていたから気になっただけだ。お前自身もよく分かっていないようだし話題を変えよう」


「え、あ、はい…」



そうだけど!そうなんだけど!


ここまで持って来た記憶もないし怖いんだけど!


ピエロ人形を見下ろせばぎょろりと目が合う。


今すぐにでも手放したい気持ちでいっぱいだが、そんなことをしたら最後、呪いにでもかけられそうな気がした。