「命があればそれでいい?笑わせるな。きみたちふたりがそばにいて、どうしてこんなことになる?!どうして俺の大切な妹の指がニセモノになってるんだ!!」
お兄ちゃんが怒鳴った。
震える声には、怒りと途方もない悲しみが込められていて
「最悪だ。なんで祥なんだ…
俺の祥が…こんな」
ガクンと王子様が両膝をついた。
こんなに落胆するお兄ちゃんは見たことがなくて、そばに寄り添う。
命を懸けて守ってもらったのにもかかわらず、取り返しのつかない状態になって帰って来てしまったことに罪悪感が湧いた。
「お兄ちゃん…ごめんなさい。
私がもっと気をつけていれば…」
「祥は謝らなくていい。なにも悪くない。
痛かっただろうに…こんなになって」
ピンク色の義指を撫でられる。
感覚はないはずなのに、温かい。
「取り乱してごめん。分かっているさ。話は聞いたから。突然の奇襲だったんだろう?」
「うん…」
予想外の出来事のあまり誰一人動くことができなかった。
それを身を持って知っているからこそ、誰を責めようとなんて思わない。
「分かってはいるけど無理だよ。祥という存在が指3本分減ってしまった。もうあの可愛らしい指を見ることも触れることもできないんだ。なにより一番大事な薬指が失くなってしまうなんて…」
「……」
「俺を差し置いて祥の隣にいるのなら死んでも守れ。ふざけるな。祥がいなければお前らなんて殺してる」
はらりと流れる前髪からのぞく鋭利な目が、日下部くんとイースをふたたび睨めつけた。
私は慌ててその視界の中に入る。



