「は、橋本さん、僕は大丈夫だよ」
「そーそー。ちょっと落ち着きなってピエロちゃん」
尻もちをついていた日下部くんとイースが立ち上がりながら言った。
いやいや落ち着くべきなのはどう考えてもお兄ちゃんでしょ?!
私以外の全員がこの状況に対して、妙に納得しているような雰囲気を肌で感じる。
「殴って許されるのなら何発でも受けろってことだ」
困惑している私に、若松先輩がそう言った。
対クーピー戦で別れて以来の彼の顔には大きな傷跡が残っている。
夢であってほしかったけど、現実なんだ…やっぱり。
ふと、若松先輩の瞳が伏せられる。
その視線は私の左手に注がれていた。
「殴ろうと、怒鳴ろうと、お前の指は戻ってこない」
「あ…」
「この俺が…お前を傷つけられて冷静でいられると思ってるのか?」
若松先輩の瞳は怒りに燃えていた。
私が負った左手の大怪我に思うところがあるのはお兄ちゃんだけではないらしい。
感情を抑えてはいるが、暴力を許すほどには業が煮えているのだ。
そばで傍観しているフィムも気まずそうにしてはいるものの制止する様子はない。



