「日下部くんのもとへ返してほしい。
アンタ怖いのよ」
「ナンセンスな呟きばかりして体力を無駄に消耗しないほうがいい。ボクはキミとの触れ合いが足りていないんだ」
「そんな愛玩動物みたいな扱い…」
「愛玩???ハハッ!冗談よしてくれ。愛でるのならもっとかわいげがあるものにするよ。バカで能天気で頭の弱いやつのそばってのは気楽なもんだろ?そういうことさ。分かったらさっさと口閉じて大人しくしてな」
こどもを相手にするように抱き上げられ、膝上におろされる。
コアラみたいにくっつく様子のなんとおかしなことか。
大きな体に対面から包まれ、イースと血の匂いが一緒になって鼻腔をくすぐってくる。
それでも温かくて、おとずれる睡魔にまぶたが下がっていくのを感じた。
こんなやつの体温でも疲れ切った体に沁みるなんて…
「考えることはたくさんできただろうけど、今はボクの中で休むといいさ」
イースの声がぼんやり聞こえる。
「やっとピエロちゃんの薬指がオレサマのモノになったぜ、へへ」
「キャラ違うでしょ…きもい…」
「はいはい。
ありがとうね、ピエロちゃん」
頭を撫でられる。
その穏やかな声に、眠気がピークに達した。
「良い夢を。ボクのかわいいピエロ」
イッツアスモールワールドが子守唄のように私の意識を沈めていく。



