◇Clown Act◇⇧



静寂が通り過ぎる。


なにひとつ読み取らせてくれない表情をしたままイースは薄く唇を開いた。



「……弱いくせに、狡いくせに。
キミは変なところで聡い」



ぼそりと呟かれたその刹那


イースが笑った。


目を弓なり曲げて、歯を見せて、
頬を上げて。


これから演者となって観客を喜ばせるピエロのように。


ううん、もともとイースはピエロだ。


そのはずなのに、なのに


今まで見てきたものとはまったく質の違う笑顔にしか見えなくて──



「ハハァなるほどォ?つまり日下部クンは、ボクが特別なピエロに見えているんだね」



長い足でターンを決めると、首元の襟がふんわり舞った。


動作が演技じみている。


けど、なにひとつ引っ掛かりを覚えないのは、私たちの知っている「道化師」というものをイースが演じ始めたから。