静寂が通り過ぎる。
なにひとつ読み取らせてくれない表情をしたままイースは薄く唇を開いた。
「……弱いくせに、狡いくせに。
キミは変なところで聡い」
ぼそりと呟かれたその刹那
イースが笑った。
目を弓なり曲げて、歯を見せて、
頬を上げて。
これから演者となって観客を喜ばせるピエロのように。
ううん、もともとイースはピエロだ。
そのはずなのに、なのに
今まで見てきたものとはまったく質の違う笑顔にしか見えなくて──
「ハハァなるほどォ?つまり日下部クンは、ボクが特別なピエロに見えているんだね」
長い足でターンを決めると、首元の襟がふんわり舞った。
動作が演技じみている。
けど、なにひとつ引っ掛かりを覚えないのは、私たちの知っている「道化師」というものをイースが演じ始めたから。



