一方のイースは投げられた問いを数秒ほど咀嚼すると、お決まりの人をバカにするような笑みをこぼした。
「ンなことボクが知るわけないじゃん?クーピーとは同じピエロってだけで、特段話したこともないっての」
「本当にそうでしょうか?」
「日下部クンはボクになにを期待してんの?
ボクなら何でも知ってるって?」
イースは「ハハッ」と声をあげ、日下部くんの顔をのぞきこむ。
「ジョーカーくんも日下部クンも、ピエロちゃんの名前呼んでたじゃねぇか。それで自然と覚えたんじゃないの?橋本祥って名前をさ。よく考えろよ?」
「そうかもしれません。
が、釈然としないんです。腑に落ちない」
「ヘェ~!おもしろい!根拠が無さすぎて返す言葉が見つからないなァ」
「イースさん、あなたはシャルドにもクーピーにもどこか特別視されていたように思えます。それに、敵側にもかかわらず、まるで第3陣営のような行動をしている。なのに誰に咎められることもない。不思議なんですよ。あなたという存在は、他のピエロとは明らかに別の次元にいる」
淡々とイースを詰める日下部くん。
余裕綽々だった嫌味なピエロの片目がわずかに痙攣した気がした。
『それはイースもトモダチになるわけだ!』
『あのイースがトモダチになるなんて』
シャルド、クーピー
双方から言われていたことを思い返す。
どこまで問題児なのかと呆れていたけれど、疑問にしてみればたしかに謎だ。
イースが誰かとトモダチになるのがそんなにすごいことなのか。
役割を果たしているピエロたちと比べると、どこまでもフラットで気ままな姿は敵とも味方とも言い難くはあるが。
「何者なんですか、あなたは」
日下部くんが目を逸らさず言い放った。



