◇Clown Act◇⇧




「日下部くん、これからどこへ行こうか?またしらみ潰し探していくのもいいし、試しに2階へ上がってみるのもいいよね」



隣を見やれば日下部くんがどこか真剣な表情をしていた。


これは緊張感?いや…



「日下部く…」


「イースさんにお訊ねしたいことがあります」



真剣味を帯びた声が、私たちよりも前を歩く縦縞模様の背中にまっすぐ向けられた。


日下部くんから漂うのは──怒り?


イースが不思議そうに振り返る。


自然と足を止める私たち。


妙な緊迫感に息を飲む。



「先ほど戦ったピエロ…クーピーが、橋本さんの名前を呼んでいました。はっきりと。彼はなぜ知っていたのでしょう?」



日下部くんの言葉を聞いた瞬間、あの戦いの際にクーピーから注がれた歪んだ視線が脳裏によみがえる。




───橋本 祥チャン




加虐心にまみれた愛などとは言えない所有欲たっぷりの瞳。


不気味な笑顔が頭にこびりついて離れない。


すごく気持ち悪かった。