「日下部くん、これからどこへ行こうか?またしらみ潰し探していくのもいいし、試しに2階へ上がってみるのもいいよね」
隣を見やれば日下部くんがどこか真剣な表情をしていた。
これは緊張感?いや…
「日下部く…」
「イースさんにお訊ねしたいことがあります」
真剣味を帯びた声が、私たちよりも前を歩く縦縞模様の背中にまっすぐ向けられた。
日下部くんから漂うのは──怒り?
イースが不思議そうに振り返る。
自然と足を止める私たち。
妙な緊迫感に息を飲む。
「先ほど戦ったピエロ…クーピーが、橋本さんの名前を呼んでいました。はっきりと。彼はなぜ知っていたのでしょう?」
日下部くんの言葉を聞いた瞬間、あの戦いの際にクーピーから注がれた歪んだ視線が脳裏によみがえる。
───橋本 祥チャン
加虐心にまみれた愛などとは言えない所有欲たっぷりの瞳。
不気味な笑顔が頭にこびりついて離れない。
すごく気持ち悪かった。



