「私も同じ。だからとりあえずグラウンドには行ってみるつもりだよ。なにがあるか怖いけど…」


『わかった。じゃあ俺もそうする。あのピエロの言うことが本当だった場合、間に合わなければ祥が被害者と同じような目に遭う。そんなの絶対に嫌だ。それに実際にグラウンドに行けば真偽が確かめられる』




スマホ越しに聞こえる真剣な声にひたすら耳を傾ける。



お兄ちゃんは妹である私のことをとても大切にしてくれている。



優しくて穏やかで、喧嘩なんて一度もしたことはない。




「そうだね。やっぱり自分たちの目で確かめないと。心配してくれてありがとう。お互いくれぐれも気をつけて行動しよう。それじゃ!」




頼もしい兄にうなずいて通話を切ろうとすれば、慌てたように「待って!」と止められる。




『祥、迎えに行かなくて平気?
ひとりで行ける?』


「もー!平気だよ!何歳だと思ってるの!」


『だって道中なにがあるか心配だし…』


「お兄ちゃん、少しは自分の心配もして?
気持ちはありがたいけど、私にとっても大事なお兄ちゃんなんだからね」


『祥…』




言い聞かせるが、返事のトーンからはまだまだ私を憂う色が消えない。




「何かあったらすぐ連絡するよ。それに私陸上部だし足には自信あるから!グラウンドなんてすぐだよ!」


『…うん』


「じゃあ切るね?またグラウンドで」


『祥』


「うん?」


『絶対にお兄ちゃんのもとへ来てね。
どこにも行かないでね』


「…わかったよ」




いつもよりも弱々しいお兄ちゃんの声にしかとうなずいた。



それから通話を切ってスマホをポケットにしまう。