もう何も言うまいと口を閉じた目の前の王様は、哀しいほどの孤独を漂わせていた。
それはきっと常に人の上に立つ者にしか分からない感情。
近寄り難い王様であったはずなのに、なぜなのか、その身勝手で加減を知らない振る舞いにはどこか幼さを感じた。
誰かに抱きしめてほしくてわざと悪いことをする子どものような。
どこにも根拠の無い想像が、不思議と脳裏に流れてきた。
すべてを水の泡にしたこの王様のことを許せないはずなのに胸に溜まる澱みがひとりでに溶けていってしまう。
役立ずで邪魔者で、泣き喚き怪我人に手を添えることくらいしかできない私が、この分かりずらい王様のどこか琴線に触れてしまったのだろう。
分かりずらい、ほんっっっとうに分かりずらいくせに、しっかりと重たい好意に、この私がどうにかうまい反応ができるはずもなく。
「…日下部くん、イース、そろそろ行こう」
ふたりに呼びかけて、踵を返す。
教室を出る前に、若松先輩のそばにしゃがんだ。
左頬の傷をそっと撫でる。
消えない傷。
わたしなんかのために。
「待っててくださいね。若松先輩。
絶対に生き残りましょう」
最後にもうひと撫でして立ち上がる。



