◇Clown Act◇⇧



もう何も言うまいと口を閉じた目の前の王様は、哀しいほどの虚無を漂わせていた。



それはきっと常に人の上に立つ者にしか分からない感情。孤独。



近寄り難い王様であったはずなのに、なぜなのか、その身勝手で加減を知らない振る舞いにはどこか幼さを感じた。



誰かに抱きしめてほしくてわざと悪いことをする子どものような。



どこにも根拠の無い想像が、不思議と脳裏に流れてきた。



すべてを水の泡にしたこの王様のことを許せないはずなのに、胸に溜まる澱みがひとりでに溶けていってしまう。



役立ずで邪魔者で、泣き喚き怪我人に手を添えることくらいしかできない私が、この分かりずらい王様のどこか琴線に触れてしまったのだろう。



分かりずらい、ほんっっっとうに分かりずらいくせに、しっかりと重たい好意に、この私がどうにかうまい反応ができるはずもなく。




「……日下部くん、イース、そろそろ行こう」




ふたりに呼びかけて、踵を返す。



教室を出る前に、若松先輩のそばにしゃがんだ。



左頬の傷をそっと撫でる。



消えない傷。


わたしなんかのために。




「待っててくださいね。若松先輩。
絶対に生き残りましょう」




最後にもうひと撫でして立ち上がる。