「え、な、?!」
弾かれたように顔を上げる。
そこには、口をへの字に曲げた王様──
大鳳会長が仁王立ちをしていた。
手には裏返された聖杯の器が握られている。
「まったく、なにを見せられているのやら」
投げ捨てられた器はカラーンと音を立てて転がった。
役目を終えた金色のそれを目で追いながら、信じられない気持ちでいっぱいだった。
だって、つまり、その
この冷たいものって
大鳳会長が、若松先輩に聖水を──
「なんだ貴様ら。感謝の言葉もないのか?
やれやれこれが育ちの違いというものか」
王は私たちを見下しながら一歩近づいてくる。
そして余裕綽々と若松先輩のそばに膝をついた。
私はとっさに、抱きしめていた大きな体を自分の方へ引き寄せる。
まだ痛みでぐったりとしている先輩。
何をされるかわからない。
私が守らないと。
すると、そんな私の様子を見た大鳳会長はおかしげに笑った。
「まぁそう警戒するな。べつにひどいことはしない。おい若松なにを寝ているのだ、シャンとしろ」
「ちょっ、ちょっと!」
王がジョーカーの緑色の髪を鷲掴んだ。
信じられなくてその手を制止させる。
「離してくれ。
こいつが死んでもいいのか?」
「よくないですけど…
そんな乱暴にしなくたって…っ」
「君の手など簡単に振りほどける。やろうと思えばこの場で息の根だって止められる。君はなにができた?泣いて、叫んで、ただ守られているだけ。自分のことすら自分で守れない者が、どうして僕に口を出せる?」
「そ、それは…っ!」
「命が賭かった場ではな、君のような人間がいちばん邪魔なんだ」
「っ…」
「覚悟も無いのに感情だけは立派でなによりだが、はっきり言わせてもらう、不愉快だ。せめて黙ってそこに座っていてくれ」
若松先輩の体を私から引きはがした大鳳会長は、真剣な表情で傷の具合を見はじめた。
邪魔な人間
真正面からぶつけられた言葉に、私は動けないでいた。



