◇Clown Act◇⇧



「え、な、?!」




弾かれたように顔を上げる。




そこには、口をへの字に曲げた王様──




大鳳会長が仁王立ちをしていた。




手には裏返された聖杯の器が握られている。




「まったく、なにを見せられているのやら」




投げ捨てられた器はカラーンと音を立てて転がった。



役目を終えた金色のそれを目で追いながら、信じられない気持ちでいっぱいだった。



だって、つまり、その



この冷たいものって



大鳳会長が、若松先輩に聖水を──




「なんだ貴様ら。感謝の言葉もないのか?
やれやれこれが育ちの違いというものか」




王は私たちを見下しながら一歩近づいてくる。



そして余裕綽々と若松先輩のそばに膝をついた。



私はとっさに、抱きしめていた大きな体を自分の方へ引き寄せる。



まだ痛みでぐったりとしている先輩。



何をされるかわからない。

 

私が守らないと。



すると、そんな私の様子を見た大鳳会長はおかしげに笑った。




「まぁそう警戒するな。べつにひどいことはしない。おい若松なにを寝ているのだ、シャンとしろ」


「ちょっ、ちょっと!」




王がジョーカーの緑色の髪を鷲掴んだ。



信じられなくてその手を制止させる。




「離せ。こいつが死んでもいいのか?」


「よくないですけど……
そんな乱暴にしなくたって……っ」


「君の手など簡単に振りほどける。やろうと思えばこの場で息の根だって止められる。君はなにができた?泣いて、叫んで、ただ守られているだけ。自分のことすら自分で守れない者が、どうして僕に口を出せる?」


「そ、それは……っ!」


「命が賭かった場ではな、君のような人間がいちばん邪魔なんだ」


「っ……」


「覚悟も無いのに感情だけは立派でなによりだが、はっきり言わせてもらう、不愉快だ。せめて黙ってそこに座っていてくれ」




若松先輩の体を私から引きはがした大鳳会長は、真剣な表情で傷の具合を見はじめた。



邪魔な人間



真正面からぶつけられた言葉に、私は動けないでいた。