◇Clown Act◇⇧



血を吐きながら、どこか無垢なこどものようなまなざしで私に縋る若松先輩。


袖を握る手はけっして離れようとしない。


この人は虚勢を張っていただけで、本当は怖かったんじゃないだろうか。


キズモノになることも。


そんな自分を見た橋本祥に


嫌われてしまうことも。



「……痛かったら言ってくださいね」


「かま、わん…いたくしろ」


「意味がわかりません」



役立ずな手袋にもできることがあった。


そっと、壊れ物に触れるみたく、血まみれの頬に手を添える。


怖がりなジョーカー。


ごめんなさい。


愛おしさが溢れてしまった。


できることならなんでも叶えてあげたかった。


吸い付くように、傷口へと唇を当てる。


鉄と若松先輩の匂いがした。



「どんな若松先輩でも好きです」



囁いてもう一度くちづける。


先輩の肌がほんの少し震えた。



「おれの、ほうが…」

「……」


「ずっと…ずっと…
おまえの、こと、すき」



視線が重なる。


毎日のように見た。


見慣れた、挑発的な瞳。