「しょ、う」
──ボタボタボタ
かなりの血が床に落ちる音と共に
低い声が鼓膜を揺らした。
頭の中が一掃されたみたいにクリアになる。
視界を向ければ、辛そうな、それでいて芯を無くしていない見慣れた瞳が私を映していた。
「来い」
たった二文字発しただけでもその傷口からはおびただしいほどの血がこぼれた。
肩を抱き寄せられ、お互いが触れるほど近くなる。
「ひだ、り、ほほ」
「…え」
「キス…しろ」
こんな時に何を言い出すのかこの人は。
早く手当をしないといけないのに。
「バカ言わないでください!そんなの手当してからいくらでもしますから今は…っ!」
「しょう」
「……っ」
きゅっ、と
服の袖を握られた。
「いまが、いい…」
「……」
「おまえ、が、ほしい」
「若松、先輩…」
「キズモノ、に、なった、おれは、きらいか…?」
心臓がきゅうううと締め付けられる。
胸の痛みにまぎれて場違いな甘さが込み上げてきた自分を叱りたくなった。



