「いやぁぁぁぁぁっ!!!!」
張り詰めた空気を、私の悲鳴が一閃した。
がくんと膝をつく若松先輩のもとへ駆け出す。
刹那にして充満する鉄の香り。
パープル色のスラックスには大量の血が滴り落ち、黒いシミとなってじわじわと広がっていた。
心臓がありえない速度で鼓動を刻む。
自分が今正しく呼吸できているのか分からなかった。
先輩の顔が…いやだ!!
最後まで見届けるなんて、そんな覚悟ハナからできてなどいなかった。
できるわけがなかった。
「若松先輩!!!」
そばに駆け寄りすぐさま腰をおろす。
顔左半分は血まみれで見ていられなかった。
裂けた皮膚の隙間から、血の海と化した口内がのぞく。
痛みを堪えるように固く目を閉じて肩を震わせながら呼吸を整えている。
「若松先輩っ、ど、どうしよう…
大丈夫ですからねっ、早く血を止めないと」
支離滅裂なことを言いながら私は慌てふためいた。
落ち着け、パニックになるな。
もう聖杯は使えないんだ。
どうにかしないと、私が…っ
自分の手のひらを見つめる。
グラウンドの砂、お兄ちゃんの血
それらを吸収してきた真白とはほど遠い色の手袋。
ダメだ、こんなもの何の役にも立ちやしない。
自分の無力さに苛立ちすら覚えかけたその時だった。



