◇Clown Act◇⇧



「なぁ、クーピー」


『んー?』


「お前のその手品で、……あーそうだな。
髪を...…ぶわっと!緑色に変えたりできちまう魔法の水なんか出せたりしないか?」


『なにそれ?

ジョークならつまんないよ』


「ジョークじゃないんだなこれが。気合いを入れたいんだよ。お前を愉しませるためにさ」




まるで人が変わったように、明るい発音でクーピーに語りかける若松先輩。



強い違和感を覚えたが、それすら打ち消してしまうくらい彼の目は、演者に染まっていた。



まるで


目の前の人物のために踊るピエロのごとく。



クーピーは一瞬いぶかしげに眉をひそめたが、なにかを感じたのかアッサリと





『わかった、いーよ』





指を鳴らし、その手にボトルらしきものを発現させた。



放物線を描いて投げられたそれを受け取った若松先輩は、一度まぶたを大きく開くと、迷いなく蓋を取って捨てる。



手のひらに液体を出し、額に流されていた前髪をすべてうしろに持っていく。



しばらく教室内には髪と粘液の擦れる音だけが響いていた。





「──よし、待たせてすまないな」




乱雑に転がされた空のボトル。



傷みを知らない黒髪を揺らす先輩はもうどこにも存在しなかった。




四角い室内の中央に佇むのは


緑色の髪を垂らしたジョーカーだった。




クーピーが目を剥いて笑う。