「キズモノになった俺は嫌いか?」
どこか切なく訊かれ、ふるふると首を横に振る。
いじわるなまなざしが優しくほころぶと
もう一度だけ私にキスをして手を離した。
「お前の顔に傷がつくくらいなら、俺自身の鼻を削いだ方が100万倍マシだ。そこの性悪ピエロ野郎だっておなじだろ?」
切れ長の目がちらりと横に視線を流すと、オレンジの性悪ピエロは「べつに」なんて言って目をそらした。
「だそうだ。愛されてるな?」
「若松せんぱ…」
「愛されるのはかまわねぇけど、お前が愛するのは俺だけにしろ。そうじゃなきゃ許さない。殺す」
「物騒すぎます」
「うるせぇ。お前は俺だけのピエロだ。黙って待ってろ。いいこにしてないと次はキスだけじゃ済まさないからな」
「んっ…」
噛みつくように唇を覆われ
奪われた舌にガリッと痛みを刻まれる。
離されれば口の端から何かが垂れた。
フレアスカートに落ちる赤い水滴。鉄の味。
「せんぱい、痛い…」
「あぁ、誰のものか忘れないようにな」
「行かないでください」
「安心しろ。死にはしない 」
「先輩っ、ん…!」
話すたび舌にビリリと痛みが走る。
「ははっ、大人しくしてろよ。俺のピエロ」
若松先輩はとんがり帽を撫でると
そのまま教室内へ戻っていってしまった。



