「ひとつ言っておくが
こいつは俺のピエロだ」
自分勝手に私の肩を抱いたジョーカーは、性悪ピエロと対峙する。
オープニングアクトがずいぶん前に思えた。
そのときに吐いた言葉はまだ有効だったみたいだ。
イースはひとつ息をついて私を見た。
「王子からもジョーカーからも引く手数多なんて、悪いピエロちゃんだねキミは。ボクの入る隙が見当たらないじゃないか」
「けっこうなことだ。こいつが今ここで生きているのは俺のおかげだからな。俺のものだ。お前に譲る部分は指一本すらない。悪いな」
「ハハッ、参ったなぁ。キミは唯一ちゃんとした話ができると思っていたのに、とんだ暴君だったね。ジョーカーなだけあるよ」
「褒め言葉として受け取っておこう。
こいつに触れる時は気をつけることだな」
薄い笑みを唇に乗せていた若松先輩から表情が抜け、冷たい視線が私に注がれる。
「お前もお前だ。気安くキスなんてされて…バカの極みだな。次他のやつにヘンなことされてみろ」
トントンと喉元をつつかれ
「俺から離れられないように
きちんと首枷を付けてやるよ」
冗談とは言わせないようなトーンにぞくりとした。
暴君だけでは収まらないただならぬ執着を感じ、私は黙ってうなずく。
それから荒っぽくこめかみに口づけられると体を解放された。
若松先輩が恐ろしくてそそくさと日下部くんのうしろに隠れる。
「は、橋本さん…大丈夫?」
やわらかい日下部くんの口調に癒しすら感じた。
頼りなく見られているけれど、日下部くんは一般的な反応をしているだけであってけっしてそんなことはない。
むしろこうしてなんら態度が変わらずそばにいてくれるのはありがたいことだ。
特に、イースやら若松先輩やらの強烈なふたりといる時は。
「おー怖い怖い。すごい独占欲だ。あんまり強引だとピエロちゃんに嫌われちゃうよ?」
「問題ない。嫌われようと俺が手放さなければいいハナシだ」
「まるでペットだな。いや、逆か。
狂暴な番犬に噛まれないよう気をつけるよ」
そうしてイースは私を一瞥するとピエロの捜索に戻るために背を向けた。
と思えば、若松先輩が「待て」と声を飛ばす。
「お前に訊きたいことがある」
「…なにかな?」
ゆっくりと振り返るイース。



