◇Clown Act◇⇧



「ひとつ言っておくが、こいつは俺のピエロだ」




自分勝手に私の肩を抱いたジョーカーは、性悪ピエロと対峙する。



オープニングアクトがずいぶん前に思えた。



そのときに吐いた言葉はまだ有効だったみたいだ。



イースはひとつ息をついて私を見た。




「王子からもジョーカーからも引く手数多なんて、悪いピエロちゃんだねキミは。ボクの入る隙が見当たらないじゃないか」


「けっこうなことだ。こいつが今ここで生きているのは俺のおかげだからな。俺のものだ。お前に譲る部分は指一本すらない。悪いな」


「ハハッ、参ったなぁ。キミは唯一ちゃんとした話ができると思っていたのに、とんだ暴君だったね。ジョーカーなだけあるよ」


「褒め言葉として受け取っておこう。
こいつに触れる時は気をつけることだな」




うすい笑みをくちびるに乗せていた若松先輩から表情が抜け、冷たい視線が私に注がれる。




「お前もお前だ。気安くキスなんてされて……バカの極みだな。次他のやつにヘンなことされてみろ」



トントンと喉元をつつかれ





「俺から離れられないように……きちんと首枷を付けてやるよ」





冗談とは言わせないようなトーンにぞくりとした。



暴君だけでは収まらないただならぬ執着を感じ、私は黙ってうなずく。



それから荒っぽくこめかみに口づけられると体を解放された。



若松先輩が恐ろしくてそそくさと日下部くんのうしろに隠れる。




「は、橋本さん……大丈夫?」




やわらかい日下部くんの口調に癒しすら感じた。



頼りなく見られているけれど、日下部くんは一般的な反応をしているだけであって、けっしてそんなことはない。



むしろこうして、なんら態度が変わらずそばにいてくれるのはありがたいことだ。



特に、イースやら若松先輩やらの強烈なふたりといる時は。




「おー怖い怖い。すごい独占欲だ。あんまり強引だとピエロちゃんに嫌われちゃうよ?」


「問題ない。嫌われようと俺が手放さなければいいハナシだ」


「まるでペットだな。いや、逆か。
狂暴な番犬に噛まれないよう気をつけるよ」




そうしてイースは私を一瞥すると、ピエロの捜索に戻るために背を向けた。



と思えば、若松先輩が「待て」と声を飛ばす。




「お前に訊きたいことがある」


「……なにかな?」




ゆっくりと振り返るイース。