.
「よかったじゃん?
選ばれたのがイカレ王子で」
そんなことを言ったのは、イースだった。
信じられなくて耳を疑った。
「言葉を慎め。誰が選ばれても良いなんてことはない」
お兄ちゃんとよく衝突していた若松先輩も、さすがに制する声には怒気がはらんでいた。
だがイースは依然、愉快そうに続ける。
「だってそうじゃないか?見てみなよ周りの惨状を。100%死にますって言われてるようなモンだろ?キミたちはこんな中であそこまでマイペースでいられる?」
どんなに見ないようにしていても、視界の端には転がる死体が映り込む。
無条件に足先が震えた。
返す言葉が見つからなかった。
「ぐるぐる考えすぎてパンクしちゃいそうなジョーカーくんも、弱虫なクサカベくんも、自己犠牲強すぎて変なところで間違えそうなピエロちゃんも。ボクには無理だと思うね」
大きな目が私たち3人を見回す。
「なにかひとつでも余計な要素が入ったら死ぬんだよ、このゲームは。1から10までイカレててくれるあの王子くらいじゃないと安心できない。ボクはあいつで心底ホッとしたね」
イースが壇上へと視線を戻した。
死体の匂いが充満する異様な空間。
正気でいられるのもやっとだ。
あの時は自分が選ばれることを切望したが、もしそれが現実になったら?
考えて、ひとり舞台の上に残されるのを想像するとゾッとした。
いかないで、誰か代わって、死にたくない。
泣き叫んでゲームどころではなくなるはずだ。
お兄ちゃんが選ばれて良かっただなんて間違っても言わない。
ただ、お兄ちゃん以外が選ばれていたら──?
確実にこの狂った空間に呑まれ、メンバーの半数が死ぬ。
そんな未来が見えてしまった。
癪だけど、イースの言うことがほんの少し分かってしまった。



