◇Clown Act◇⇧





「よかったじゃん?
選ばれたのがイカレ王子で」



そんなことを言ったのは、イースだった。


信じられなくて耳を疑った。



「言葉を慎め。誰が選ばれても良いなんてことはない」



お兄ちゃんとよく衝突していた若松先輩も、さすがに制する声には怒気がはらんでいた。


だがイースは依然、愉快そうに続ける。



「だってそうじゃないか?見てみなよ周りの惨状を。100%死にますって言われてるようなモンだろ?キミたちはこんな中であそこまでマイペースでいられる?」



どんなに見ないようにしていても、視界の端には転がる死体が映り込む。


無条件に足先が震えた。


返す言葉が見つからなかった。



「ぐるぐる考えすぎてパンクしちゃいそうなジョーカーくんも、弱虫なクサカベくんも、自己犠牲強すぎて変なところで間違えそうなピエロちゃんも。ボクには無理だと思うね」



大きな目が私たち3人を見回す。



「なにかひとつでも余計な要素が入ったら死ぬんだよ、このゲームは。1から10までイカレててくれるあの王子くらいじゃないと安心できない。ボクはあいつで心底ホッとしたね」



イースが壇上へと視線を戻した。


死体の匂いが充満する異様な空間。


正気でいられるのもやっとだ。


あの時は自分が選ばれることを切望したが、もしそれが現実になったら?


考えて、ひとり舞台の上に残されるのを想像するとゾッとした。


いかないで、誰か代わって、死にたくない。


泣き叫んでゲームどころではなくなるはずだ。


お兄ちゃんが選ばれて良かっただなんて間違っても言わない。


ただ、お兄ちゃん以外が選ばれていたら──?


確実にこの狂った空間に呑まれ、メンバーの半数が死ぬ。


そんな未来が見えてしまった。


癪だけど、イースの言うことがほんの少し分かってしまった。