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~数分前~
『橋本……頼んだぞ』
自分が当たりを引く覚悟をしていたのだろう。
若松先輩は血の気の引いた顔でお兄ちゃんにそう託していた。
対してお兄ちゃんはひとつの動揺も見せていなかった。
むしろどこかわくわくしたような顔で
『なにをそこまで深刻そうにしているんだい?嬉しいくらいだ。当たりを引きたくてたまらなかったからね』
と、上機嫌に赤色のトランプカードを眺めていた。
どこからそんな余裕が出てくるのか。
普段と変わらぬマイペースでいられるのか。
若松先輩も日下部くんも唖然としていた。
じっとお兄ちゃんを見つめていれば、視線が重なる。
『祥…』
両頬を包まれる。それから、鼻先にキス。
『お兄ちゃんが祥のことを守るからね。
心配しないで見ていて?』
安心させるみたいに
ぎゅうううと抱きしめられる。
泣いてしまいそうだった。
この抱擁が最後になってしまうかもしれないのだ。
しばらくしてお兄ちゃんから離されると
若松先輩に引き渡され、ふらふらとした足取りで壇上からおりたのだった。
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