「フィム、大丈夫。若松先輩の言うとおり、あなたに責任はない。選択をしたのは私たちなんだから。そんな顔しなくていいよ」
「う、うん…ありがとうショウ」
フィムは薄い笑顔を見せてはくれたが、
顔色は悪いままだ。
大丈夫だろうか…心配だ。
「なに甘いことを言っているんだい?もし祥が死んだら、ここにいるやつら全員まとめて俺が殺すから」
静かな体育館にお兄ちゃんの声が響いた。
若松先輩が頭を抱える気配がする。
「お、お兄ちゃ…」
「安心してね、祥。みんなを殺したら俺もちゃんと後を追うから。絶対離れない。寂しい思いなんてさせないよ」
うっとり目尻を下げ、私のおでこにチュと口づけた。
それを見たイースがおかしげに笑う。
「なぁジョーカーくん、あのイカれ王子みたく突き抜けちまえばちょっとは心労も減るんじゃないのか?」
「同感だが…あそこまでいくのは俺みたいな常人には無理そうだ」
肘でつつかれながら若松先輩が諦めたように肩をすくめる。
体育館の中へ入ったばかりの私たち。
踏み込んだはいいものの、現実離れしすぎた光景に前へ進めないでいた。
死にに行くようなものだ。
誰もがそれを感じていた。
「みんなどうする…?
引き返して他の場所をあたる?」
私は提案した。
とんでもないピエロがいることなんて一目瞭然なのだ。
するとフィムが難しい顔をして言う。
「なるべくそうしたほうがいい。
ただ───」



