「え、あ、もう行くの?!
心の準備とか…そういうのが、まだ…っ」


「じゃあ腹が据わるまでそこにいるんだな」



怯える日下部くんに冷たく言い放ったイースがダルそうに中へと入っていく。


ピエロ側は気楽なものだ。


日下部くんのこと好きとか言っていたくせに。



「ほんっっっとうに嫌なやつ!怖いに決まってるでしょーが!日下部くん、一緒に行こう。きっとどうにかなる!」


「は、橋本さん…うん…」



伸ばした手を日下部くんが握った。




「フィムも、行こう」




碧い目をしっかりと見つめる。



「あぁ」



深くうなずいたフィムは、日下部くんを挟むようにそばへ駆け寄った。


心臓が強く脈打つ。


ここからは自分自身で命運を選び、守らなければならない。


本気のゲームだ。


ついに始まってしまった。


ただならぬ緊迫感にごくりと生唾を飲んで、私は体育館へと入った。