「ついたぞ。第一体育館だ」



先頭を行く若松先輩が足を止めた。


渡り廊下を越えた先で私たちを出迎えたのは、大きなホール状の建物。


雨川高校には第一と第二の体育館がある。


5体いるピエロがどのように振り分けられているのか気になるところだ。



「…やけに静かだな」



若松先輩のつぶやきに、私も耳を澄ませる。


たしかに中からは物音ひとつしない。



「い、意外と他のグループは来ていないのかもしれませんね」


「どうかな。嫌な予感しかしないけど」



日下部くんの希望的観測をバッサリ切るように、お兄ちゃんが前へ出て扉を開けた。


ギギギ…と、重たい音が響く。


そしてお兄ちゃんはなんの躊躇いもなく体育館へと入っていった。



「ショウのお兄さんは度胸があるんだね」



フィムが感心したように言う。



「いや、イカれてるだけだ。おい待て橋本!勝手に行くな!」



流れるように否定した若松先輩がお兄ちゃんの後を追う。