「ふん、バカバカしいね。第一、ボクが痛いなんて言ったらキミは心配してくれたのか?」
「するにきまってるでしょ」
「嘘だね。さっきの問答がなかったら、キミはボクのことなんか気にも留めなかったさ」
「そう思ってればいいよ。べつに理解なんて求めてない。ただあなたにも心があって、痛みを感じる。私はそう思うことにした」
「痛みを感じるのはなにも人間やピエロだけじゃないさ」
「違う。こんな怪我して放っておかれるなんて、痛むのは心の方でしょ」
もう一度だけハンカチ越しに傷口を撫でると、その上から手袋をはめさせた。
「なるほど?こんなことしてボクにつけこもうって魂胆か。そんなにボクとトモダチになりたいの?」
「もう、疑り深いのも大概にしてよ。私は怪我をしたあなたのことを放っておけなかった。いたってシンプルな話!」
イースの手をゆっくり下ろし、行く道に視線を戻す。
「…私のお兄ちゃんがごめん」
「なぜキミが謝る?
ボクに怪我をさせたのはキミの兄だ」
「代理として謝ってるの。お兄ちゃんあんな感じだし…あなたとの会話すらままならないだろうから」
「おかしなやつだ…。
キミは本当に気持ちが悪い」
唐突に、左手をすくい上げられた。
え、なに?
声を出そうとすれば「しー」と人差し指を立てられる。
気づけば私たちは列の最後尾にいた。
「キミのようなやつが、ここにリングをはめるのは似合わない。ひどく不愉快だ」
イースの指が、私の薬指に収まるリングを抜いた。
そうして今度は右手をすくい上げ、そちらの薬指に通す。



