◇Clown Act◇⇧



「ふん、バカバカしいね。第一、ボクが痛いなんて言ったらキミは心配してくれたのか?」


「するにきまってるでしょ」


「嘘だね。さっきの問答がなかったら、キミはボクのことなんか気にも留めなかったさ」


「そう思ってればいいよ。べつに理解なんて求めてない。ただあなたにも心があって、痛みを感じる。私はそう思うことにした」


「痛みを感じるのはなにも人間やピエロだけじゃないさ」


「違う。こんな怪我して放っておかれるなんて、痛むのは心の方でしょ」



もう一度だけハンカチ越しに傷口を撫でると、その上から手袋をはめさせた。



「なるほど?こんなことしてボクにつけこもうって魂胆か。そんなにボクとトモダチになりたいの?」


「もう、疑り深いのも大概にしてよ。私は怪我をしたあなたのことを放っておけなかった。いたってシンプルな話!」



イースの手をゆっくり下ろし、行く道に視線を戻す。



「…私のお兄ちゃんがごめん」


「なぜキミが謝る?
ボクに怪我をさせたのはキミの兄だ」


「代理として謝ってるの。お兄ちゃんあんな感じだし…あなたとの会話すらままならないだろうから」


「おかしなやつだ…。
キミは本当に気持ちが悪い」




唐突に、左手をすくい上げられた。




え、なに?


声を出そうとすれば「しー」と人差し指を立てられる。


気づけば私たちは列の最後尾にいた。



「キミのようなやつが、ここにリングをはめるのは似合わない。ひどく不愉快だ」



イースの指が、私の薬指に収まるリングを抜いた。


そうして今度は右手をすくい上げ、そちらの薬指に通す。