◇Clown Act◇⇧



「祥、そいつはもういいよ。何をしてくるか分からない。それに、祥の唇に傷をつけていたのを俺はしっかりと見ていたんだ」




お兄ちゃんが冷たく放つ。



警戒心剥き出しの双眸が、鋭くピエロを睨みつけている。



心配性の兄に私は「大丈夫」と目で言うと、ふたたびオレンジのピエロへと向き直った。




「あなたもピエロなんでしょう。ならトモダチになることを要求してもいいはず」


「ハハァ、すごいねキミ。心を通わせることを"要求"なんて冷めたふうに言うのか」


「冷めているもなにも、犠牲者が出る時点でこんなゲームに血なんて通っていないでしょ」




ピリついた空気が私とピエロの間に流れる。



怖くないわけない。



けれど、目の前にあるのは確実に生き残るチャンスのひとつなんだ。



なにもせず逃すのはもったいなさすぎる。



そうだ、そうなんだ。



私の足が動いた理由なんて、そんなものだ、きっと。



行動にあとから思考を貼りつけるみたく、自分に思いこませた。



強く見つめていると、腕を組んでふにゃりと斜めに立つオレンジのピエロが、呆れたように息をついた。




「……イイコト教えてやろうか」




1歩、長い足が近づいてくる。




「トモダチっていうのは、そんなふうにモノみたく見るもんじゃないんだよ」




その手が、自身の手の甲と、私の下唇を順番に触れていく。