「祥、そいつはもういいよ。何をしてくるか分からない。それに、祥の唇に傷をつけていたのを俺はしっかりと見ていたんだ」
お兄ちゃんが慌てて駆けてくる。
警戒心剥き出しの双眸が、鋭く前を睨みつけた。
心配性の兄に私は「大丈夫」と目で言うと、ふたたびオレンジのピエロへと向き直った。
「あなたもピエロなんでしょう。ならトモダチになることを要求してもいいはず」
「ハハァ、すごいねキミ。心を通わせることを"要求"なんて冷めたふうに言うのか」
「冷めているもなにも、犠牲者が出る時点でこんなゲームに血なんて通っていないでしょ」
ピリついた空気が私とピエロの間に流れる。
怖くないわけない。
けれど、目の前にあるのは確実に生き残るチャンスのひとつなんだ。
なにもせず逃すのはもったいなさすぎる。
そうだ、そうなんだ。
強く見つめていると、腕を組んでふにゃりと斜めに立つオレンジのピエロが、呆れたように息をついた。
「…イイコト教えてやろうか」
1歩、長い足が近づいてくる。
「トモダチっていうのは、そんなふうにモノみたく見るもんじゃないんだよ」
その手が、自身の手の甲と、私の下唇を順番に触れた。



