「は、橋本さんを傷つけるのはやめてくださいっ。ぼ、ぼぼ、僕の大切な人なんです!」
躓きながらも発された日下部くんの言葉に、オレンジのピエロは鼻で笑う。
「なに?色恋?やめた方がいいよ。そんな気持ち悪い善人者。ボクがもっといいコ紹介してあげようか?ピエロだけど☆」
「は、は、橋本さんのことを何も知らないくせに!偉そうに言わないでくださいっ」
「あーなるほどすまないね。
すでに恋人だったか。いい趣味してるよ」
「違います!…けど。は、橋本さんは、ピエロとか人間とか、そういう垣根を考えずに心に寄り添える人なんですっ」
「………」
「たしかに、犯罪者側を気遣うのは正しい行為じゃないかもしれないけど…立場よりも優しさにベクトルを向けられる橋本さんをバカにするのは許さない!」
私の手を包んでいる日下部くんの手はひどく震えている。
でもそれ以上に、力強い言葉が細い背中を大きく見せた。
私は自分の選んだ道になに一つ自信なんて持てないけど、心だけは間違っていないと教えてくれた気がして、なんだか泣きそうになる。
負けじと唇を吊り上げた。
私の心を表すのは、頬にペイントされた涙のマークだけでいい。
すると、日下部くんの肩越しに
またオレンジのピエロと目が合ってしまった。
ゾッとするような笑顔だった。



