下唇を指でなぞれば赤色。 唾液に混ざる鉄の味。 「最低…」 つぶやけば、懲りもせずにまた 「かわいいなぁ」と返される。 嫌悪感を通り越して恐怖すら覚えた時だった 「や、やや、やめてくださいっ」 小さくもはっきりとした声が、私とピエロの間を裂いた。 視線を向ければ、ガタガタと震える日下部くんの姿。 誰よりも怯え、誰よりもこの状況に困惑していた彼が、声を振り絞ったのだ。 膝を笑わせながらこちらへ来ると、私の手を取り、自身の背に隠した。