◇Clown Act◇⇧




「君は殺さないでおこう。
まだ妹に危害を加えていないからね」




お兄ちゃんは王子様のような笑顔をこぼすと、刺さっていたカードを抜いた。



カードの角には、肉を貫いたぶんの血が付着している。



床に1滴、赤が垂れた。



私は、目の前の光景が信じられなくて息を忘れていた。



お兄ちゃんが……誰かを傷つけた……



感じたこともないショックに見舞われていると、オレンジのピエロの肩がふるふると震えているのに気がつく。




「ハハッ、ハッ!キミいいなぁ、イカれてやがる」




楽しそうに、愉しそうに、ピエロは笑った。




「最高だ。ボクの嫌いなタイプだ!なぁキミ……名前教えてよ!」


「人に名前を尋ねる時は自分から名乗るのが礼儀だよ」


「残念、ボクはピエロなんでね。人間サマのルールなんて知らないのさ。あーあ、早くこいつ死なねぇかなぁ?」




オレンジのピエロはフレンドリーにお兄ちゃんの肩へと腕をまわした。



一方まわされた側は、面倒なものに絡まれたと、心底不愉快そうな色を浮かべている。



微塵も怯えていない様子はさすがだった。



しかしこのピエロ、発言のトーンだけはずいぶん明るく好意的にも聞こえるが、大きな蜂蜜色の瞳は、不気味なほど何も映していなかった。



まるで濁った水晶のように。