「おや、ご指名かな?光栄だね」



若松先輩の嫌味など意にも介さないお兄ちゃんは、ちらりとうしろに目をやった。



「そうだね。俺はピエロがトモダチになってくれる人数なんて気にすることじゃないと思うよ。だってピエロだもん。優しいさ。一緒にお遊びを楽しめばきっとトモダチになってくれる」


「優しい?どういう感性してたらそう思えるんだよ。何人も生徒が殺されてるんだぞ?」


「話は最後まで聞くべきだよ若松。ピエロは俺たちにノルマを課した。優しい優しいピエロと最低でも3体トモダチになれとね」


「あぁ、2時間で3体だ。
そのノルマだけなら優しいかもな」


「本当にそうかなぁ?俺はものすごく意味を持って設定されていると思うよ。たとえば着目すべきなのは
トモダチに"なる"道筋…だったり」


「……一筋縄ではいかねぇってことか」



若松先輩の言葉に、お兄ちゃんはニヤリと笑った。



「誰かと友達になるのは簡単じゃないからね。話しかけることはできても、そこから仲を深めていくのは難しい」


「……」


「それに、ピエロたちは人を殺してる。そんなの俺も分かってる。ヤツらは羊の皮を被った狼だよ。容赦なんてない」


「お前にこんな建設的な話ができるなんて思わなかったぜ」


「それはどうも。俺の話はあくまで推測に過ぎないから聞き流してくれて結構だよ。ピエロはトモダチの印であるリングなんて物的証拠を用意してる。いざとなればピエロを殺してでもリングを奪い取ってトモダチと言い張るさ。俺の祥が死ぬわけにはいかないからね」


「…やっぱイカれてるな」



若松先輩が顔を歪めた。