◇Clown Act◇⇧



「そういえば祥、ずーーーーーーっと気になっていたんだけど、その腕に抱きしめているピエロ人形はなんなのかな?」




道中、お兄ちゃんにたずねられた。




「え……?」




視線を下げれば、私の腕の中には2体の
ピエロ人形が収まっていた。



あれ……?
私……オープニングアクトで若松先輩に同じ指摘されてから、この子たちどうしてたっけ……?



心臓がひんやりと冷たくなる。




「たしかに。お前それずっと持ってるよな」


「わ、若松先輩……っ」




縋るように目をやった。




「私、いつからこれ持ってました?オープニングアクトの時までは覚えているのですが……。その後の休憩時間も?さっきの話し合いの時も?ピエロに気絶させられた瞬間も?」


「あぁ。肌身離さず抱いてたぜ」




冷や水をかけられたように全身が硬直する。



足を止めれば、みんなも合わせるように動きを止めた。




「祥……大丈夫?変なことを訊いてしまったのならごめんね。ただ……あまりにも大事そうにしてるから羨ましくって」




申し訳なさそうに顔をのぞきこんでくるお兄ちゃん。



私の表情はきっと固まっているだろう。



心配かけたくなくて、無理やり唇の端を持ち上げる。




「ごめん……大丈夫!実はこの子たち私のロッカーに置いてあったの。ほっとけないから持ってきちゃった」




ヘラリ笑って2体のピエロ人形を見つめる。



本当にそうだろうか?



私からしてみれば、この子たちが
"着いてきた"という感覚に近い。



無意識下でも、けっして離れようとしないピエロ人形。



正直、肌に触れていることすら恐ろしかった。




「そうなんだ……。祥は優しいね。物を大事にするのはいいことだけど、お兄ちゃんヤキモチやいちゃうから、あまり構いすぎないようにしてね?」


「う、うん。わかった」




うなずいて、また歩き出す。


大事に……か。