豪華な部屋に存在するのは、たった二人。

私、リーシア・ヴィルトールと、愛する私の婚約者であるルイズ・アーティクトだけ。

そして、私はただただ静かに涙を溢している。




ルイズ様に馬乗りになり、ルイズ様の首筋のすぐそばに震えた手でナイフを突きつけながら。





まるで、今からでもルイズ様の首にナイフを刺す数秒前のような光景。

そんな私をルイズ様はまだ慈しむような顔で見ている。

地獄のような光景。





「っ!」





そこで目が覚めた。

服には、冷や汗が滲《にじ》んでいる。

「なんだ、夢か……」と普通の人間なら思えるだろう。

しかし、実際は夢の中の私より、私は震えていた。


「はぁ……!はぁ……!」


呼吸が荒くなっていく。

なんとか深呼吸をしようとしても、気持ちを落ち着けようとしても、出来るはずなかった。