◇
「さぁ、洗いざらい吐け」
「何が?」
生徒会室にて。
用事で来られない九条くん以外の生徒会メンバーと顧問が集まるこの部屋で、何故か私は入るなり、夜鳥くんと机を挟んで向き合う形で座らされた。
そして学食で買ってきたであろうソーダを渡されながら、いきなり「吐け」と迫られたのである。
「何? 新手のいじめ??」
「とぼけるなっ!!」
首を傾げれば、勢いよく机を叩かれ、怒鳴られる。
尋問ごっこ、ノリノリですね。夜鳥サン。
「状況証拠は上がってんだ! 水輝っ、言ってやれ!!」
呼ばれて夜鳥くんの後ろに座っていた雨美くんが、何やら小さい紙を持って立ち上がる。
あんたも結託してんのかい。
「ボクは状況証拠としてこれを提示するよ」
「……?」
そう言って雨美くんが机の上に置いたのは、一枚の写真。
どうやらクラスで私と九条くんが話しているところを写したもののようだ。思わず隠し撮りかよとゲンナリする。写っている窓の外が雨であることから、最近撮ったものと推測できた。
ん? というかまさかこれ……。
「これはついさっき、クラスでの二人を撮った写真だよ。ここで九条氏は、『じゃあまた明日ね、まふゆ』と発言している。そう、文化祭までは確かに〝雪守さん〟だった筈なのに、急に〝まふゆ〟呼び。これは二人の間で何か特別な――」
「わあああ!! わあああああっ!! 黙秘っ! 黙秘を致しますっ!!!」
ガターンッ!! と思いっきりイスを引き倒し、私が絶叫して立ち上がれば、「被告人、静粛に」と夜鳥くんが冷静に言い放つ。
くそう、いつから尋問から裁判になったんだ!?
「ふんっ、まだ吐かねぇか。次! もめんっ、言ってやれ!!」
夜鳥くんに顎をしゃくられ、部屋の隅に立っていた木綿先生が前に出てくる。
おい、顧問。何一緒に遊んでんだよ。
「証言します。僕は舞踏会で見たんです。みんなの前で踊る二人が何事かを囁き合っているのを。こう見えて僕は読唇術が得意なので解読した結果、〝私、九条くんに守られっ放しだなって反省してたの。このままじゃ九条くんに悪いし、何よりされっ放しは私の性に合わない。何か私が出来そうな……〟」
「うわああああ!! 止めろぉ! 止めてくれぇええっ!!!」
なんでそんな詳細に覚えているんだよ!? そもそも読唇術が得意って、なんで!!?
耐えがたい恥ずかしさに、私はのたうち回る。
「吐かねぇ限り、この拷問は無限に続くぜぇ……?」
そんな私を一瞥して、夜鳥くんが悪い顔をする。もはや悪代官ですね。
というか尋問も裁判もすっ飛ばして、私は拷問を受けてたんかいっ!?
そんな心のツッコミは誰にも届くことはなく、結局抵抗も虚しく、私は観念することとなったのだ……。