雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 大丈夫と言われても、まず今の状況が理解出来ないのだ。
 しかし動いてしまった状況は、私を悠長には待ってはくれない。なかなか中央に出て来ない私達に周囲がザワザワとしだす。

 それでも踏ん切りのつかない私に発破をかけたのは、九条くんの一言だった。


「こういう時、場の流れに乗らないのは野暮だよ?」

「…………野暮」


 そっか野暮か。野暮だとは思われたくない。


「分かった、リードは任せた」


 ようやく私は覚悟を決めて、差し出された九条くんの手に手を重ねた。するとそのまま自然なしぐさで九条くんにエスコートされ、私達はダンスホールの真ん中へと向かう。
 自然と人垣が割れ、たくさんの視線を一身に受けて居た堪れない。

 ウロウロと視線を彷徨(さまよ)わせれば、女子達の群れから逃れたらしい雨美くんと夜鳥くんが、木綿先生と一緒にこちらを見ているのが見えた。
 そしてその隣には、朱音ちゃんと演劇部の部長さんがいて、私に向かって小さく手を振っている。
 更に二人の隣には、鬼のような形相でこちらを睨む、うちのクラスの女子達が見え……うん。そっちは見なかったことにしよう。

 そうして視線を戻すと、私と同じ状況にも関わらず、涼しい顔で周囲の視線受け流している九条くんの横顔が見えた。
 その表情に何故か負けたような悔しさが、私の中に募っていく。

 ホールの中心にたどり着くと、吹奏楽部の美しい演奏がまた始まり、その音楽に包まれた私達はゆっくりと踊り出す。
 全身に刺さる周囲の視線に圧倒され、慣れないダンスに緊張感で爆発しそうなのに、不思議と私が九条くんの足を踏むことはなかった。
 これが〝俺がリードするから〟ということだろうか? また悔しさが募っていく。

 だって私はずっと九条くんに守ってもらいっ放しだ。もっと頼ってと言われたが、頼らずとも頼ってばかりなんて、なんて情けないんだろう。

 私は九条くんと対等な関係でいたいのに。
 だからあの時、九条くんと契約関係になったのに。


「……また何が悩んでる?」

「…………」


 ぐるぐるとまとまらない頭に、九条くんの声が優しく響く。

 なんで九条くんは、こんな些細な私の変化まで気づいてしまうんだろう? 悔しい。