雪女ですがクラスのイケメン妖狐の癒し係になりました



 確かに女子達は、私達には決して近づいて来ない。しかしそれでもこちらに向けられる視線は、そりゃあもう鋭いものだ。もし視線が刃ならば、私はとっくに死んでいるだろう。
 またもや女子達との溝が深まったことを心の中で嘆く。

 本来ならばその元凶である九条くんに、ステージでの件も含めて小一時間文句を言いたいのだが、さすがにこんな場でそれをするのは気が咎める。
 じゃあさっきの木綿先生の意味深な発言について、いっそ本人に聞いてみる? 

 ……いや、やめとこう。もし午前の保健室での時みたいに拒絶されたらと思うと、なんか怖いし。


「…………」


 しかしそうは言っても、横にいる存在を無視することも出来ないので、とりあえず気になっていたことを聞いてみることにする。


「ねぇ、なんで九条くん達はタキシードなの? 実はドレスアップしてもらえるカードを持っていたとか?」

「カード……は知らないけど、俺達が文化祭の後片づけで生徒会室にいたら、演劇部の部長さんが訪ねて来てね。舞踏会には雪守さんもいるから、みんなで参加しないかと誘われたんだ」

「え……」


 その言葉に部長さんの言っていたことを思い出す。


『うふふ。アタシはまだこれからドレスアップしなきゃいけない人達が控えているから、それが終わったら行くわ』


 そう確かに別れ際、部長さんは〝自身の手でドレスアップする人達がまだ控えている〟と言っていた。

 その人達(・・・・)とはすなわち――。


「――――っ!?」


 そこまで思い至って、勢いよく周囲を見渡す。するとすぐに目的の人物は見つかった。
 赤い艶やかな着物を着た、ひときわ目立つ大柄な女性。私が凝視すれば、向こうも私に気がついたようで、去り際と同じようにバチンとウインクされる。それに私は思わず倒れそうになった。

 いつから(たばか)られていたのか? というかまさか朱音ちゃんも共犯……? 
 いや、朱音ちゃんは天使。考えないようにしよう……。


「さーあ、みなさん! 場も温まってきたところで、本日のお楽しみ! 文化祭で一番輝いていた男女の発表といきましょーっ!!」


 すると頭痛がしてきた頭に、なんとも騒がしい声が響く。そういえばそんな催しもあったっけ。
 気がつけば吹奏楽部の美しい演奏も終了しており、先ほどまで上品にしっとりと踊っていた生徒達も司会の声に煽られて、ワッといつもの盛り上がりを見せた。
 こういうところはやはり学生のノリである。