神琴(みこと)さまに水輝くんに雷護くんよーっ!! まさか舞踏会に参加させるなんて、来てよかった……!」

「タキシード姿、なんて美しいの……! 他の男子が石ころに見えるわ……!!」


 タキシードを完璧に着こなすキラキラしい三人組の登場に、女子達が沸き立つ。しかし私はといえば、口元がヒクヒクと引きつるのを感じた。
 そんな私の横で木綿先生が、「あはは、やっぱり賑やかになりますね」とのん気に笑う。

 なんか今日は三人セットが多くない!? もしかして仲良しになったのかな!?
 だがそう脳内でツッコんだ途端、九条くん達の方へと女子達がどっと押し寄せて、三人は散り散りになってしまった。


「ん? あれ?」


 こういう場合、みんな真っ先に九条くんへと群がるものなのかと思っていたが、意外にも女子達が取り囲んだのは、雨美くんと夜鳥くんの方だった。
 九条くんに対してはみんな遠巻きにして、熱い視線を送っているようである。やはり貴族の中でも頂点である、妖狐一族の次期ご当主様には何かと遠慮があるのだろうか? 馴れ馴れしく彼に近づいていく女子はいない。

 ……ていうか、え? 寧ろ九条くんが私に一直線に近づいて来るんですがっ!? 何故!?


「雪守さん、頑張ってください」

「あ……」


 木綿先生がポンポンと私の肩を叩いて去って行く。
 さっきの意味深な発言について聞きたかったのに、結局聞けず仕舞いだ。


「ずっと踊らないで料理を食べてたの?」
 

 先生と入れ替わりに私の前に立った九条くんが、料理でてんこ盛りになった私の皿を見て、目を丸くして言う。


「踊るより美味い飯が食いたい」

「正直だな」
 

 私の返しに九条くんがクスッと楽しそうに笑った。
 そうしてそのまま自分こそ踊ることなく、「どの料理を気に入ったの?」だの、「これはこう食べると美味しいよ」だの言いながら、私と一緒に料理を食べている。

 なんで? お腹空いてたの??