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「雪守さん! どうかおれと踊ってくださいっ!」
「ごめんなさい、私ダンスは苦手で」
この台詞も何度目だろう?
目の前の男子が落胆したようにガックリと肩を落として去って行く。
ダンスが苦手ならこんなとこに来んなという話だが、それは不可抗力だったのだから仕方ない。
――あれから私は、朱音ちゃんに踊るよう言われたにも関わらず、男子からの誘いを全て断ってひたすら料理を貪っていた。
まさに色気より食い気であるが、実際ダンスなんて踊ったこともないし気にしない。
ぼっちだって気にしない。
「こんばんは、雪守さん。今夜は一段と美しいのに、さっきから食べてばかりですが、ちゃんと楽しんでます?」
「食べることが私の楽しみなので……て、なんです? その仮面」
知っている声に振り向けば、タキシード姿にいつもの長い茶色のロン毛を緩く一つに束ね、何故か目元を仮面で隠した木綿先生がいた。
思わず怪訝な顔をすれば、木綿先生が照れ臭そうに笑う。
「いや〜。舞踏会なんて楽しそうだし、僕も参加したいなーって思ったんです。でも先生がいたら、みんなが気後れしちゃうかなって思いまして、変装することにしたんですよ」
てへへと笑う先生に一気に脱力したが、「思いっきり正体バレバレですけど」という言葉はなんとか飲み込んだ。
「それにしても九条くん達は来ていないんですかね? いたら賑やかで楽しかったのに」
「いなくて正解ですよ。楽しいどころかパニックになります」
もし九条くんがここに居たら、今は上品に踊っている女子達が、瞬時に肉食獣へと豹変する様が容易に想像出来た。
苦々しい顔でそう言えば、「確かにそうですね」と先生が苦笑する。
「ああ、それよりも先生」
「え?」
私はまだ木綿先生に日中のお礼を言えていなかったことを思い出し、居住まいを正した。
