話をしながら会場を歩いていると、私達はガラガラの料理コーナーへとたどり着いた。
それに私は驚き目を見開いて叫ぶ。
「えっ!? 料理がある! 舞踏会って料理もあるの!?」
「ふふ、お腹空いたね。ちょっと食べようか」
どれも色とりどり、見たことのない料理ばかりだが、上品なことだけは分かる。こんなにも美味しそうなのに、みんなおしゃべりに夢中で全然料理に手をつけていないとは、なんとも勿体無い話だ。
「わ! これ美味しい! 高級な味だ!」
とりあえず食べてみたいものを皿に盛ってパクパク口に運ぶと、あまりの美味しさに顔が綻ぶ。
「これはゼリー寄せで、それはローストビーフだね」
「へぇー! ローストビーフ!」
美味い美味いと料理の名前も分からずパクつく私に、朱音ちゃんが一つ一つ丁寧に名前を教えてくれる。さすが朱音ちゃん、博識だ。
そうして珍しい料理にすっかり夢中になって食べていると、何やら綺麗な音楽が流れ始めた。
「ん……?」
「ダンスの時間が始まったんだよ」
首を傾げると、またも朱音ちゃんが教えてくれる。どうやら吹奏楽部がこのために生演奏をしているらしい。
するとさっきまで歓談していた男女が、一人、また一人と手を取り合い、ゆっくりとダンスを踊り始める。その光景はなんとも幻想的で、思わずぼんやりと見惚れてしまう。
「不知火、踊らないか?」
と、そこで一人の男子が朱音ちゃんに声を掛け、手を差し出した。それに朱音ちゃんも応えるように微笑んで、その手に手を乗せる。
「まふゆちゃんも折角だし踊りなよ」
私にそう言い残して、朱音ちゃんは会場の中央へとエスコートされて行ってしまった。
彼はあれだ、広報班で朱音ちゃんと一緒に看板制作をしていた男子だ。
朱音ちゃんを取られたのは非常に業腹だが、臨時メンバー募集の際に私の圧迫面接を突破した、真面目な男であることは間違いない。今日のところは舞踏会だということも加味して、見逃すことにしよう。
そう考えて、私はまた皿に盛ったローストビーフを口に入れた。
