「うわあぁぁ!? 朱音ちゃん可愛過ぎィ!! 記録! 記録に収めないとッ!!」


 部屋に入ってきた朱音ちゃんは、待望のドレス姿だった!!
 ふわっふわっのスカートが目を引くピンクのドレスに腰に付いた大きなリボン。ピンクの髪は上半分だけ編み込んで生花が差し込まれ、下はふわふわと肩に流している。
 いつもと違ってお化粧もしており、さながら春の妖精のような可憐な可愛さだ。


「可愛い!! 天使!? 妖精!? 朱音ちゃんって、本当にこの世の存在なの!?」


 興奮し過ぎて変態のように息が荒い私に、朱音ちゃんが困ったように笑う。


「もうっ、それはこっちの台詞なのに! まふゆちゃん綺麗過ぎだよ! こんな姿見たら、絶対男子全員まふゆちゃんを好きになっちゃう!」

「あはは、ありがと」


 大袈裟に褒めてくれる朱音ちゃんに笑ってお礼を言えば、朱音ちゃんがジッと私を見上げた。


「ん?」

「いいなぁ。まふゆちゃんって、本当にスタイルいいもん。身長何センチなの?」

「んー……確か165センチだったっけ」

「わぁ、いいなぁ! わたし152センチしかないよ~」


 ぶぅと朱音ちゃんが可愛く唇を尖らせる。
 ああ、唇ツンツンしたい。


「あらあら、165センチも152センチも可愛らしくていいじゃない。アタシなんて204センチだから、合う服を探すだけでも大変なんだからね~!」


 メイク道具を片付けながら野太い声で部長さんが私達の会話に交じる。確かにそれだけ高いと色々大変そうである。


「それよりもそろそろ舞踏会が始まる時間よ。さぁ、早くお行きなさいな」

「え? 部長さんは行かないんですか?」


 舞踏会の主催者なのに何故? と私が首を傾げれば、部長さんがまた「ふふ」と蠱惑的に笑った。


「うふふ。アタシはまだこれから(・・・・)ドレスアップしなきゃいけない人達が控えているから、それが終わったら行くわ」


 ◇


 部屋を去り際、部長さんにドレスとお化粧のお礼を言うと、「今宵を楽しんでねぇん!」とバチンとウインクしてくれる。
 本性はがしゃドクロだという演劇部の部長さんは、野太い声と大柄が特徴の、優しいオネェさんだった。