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「う~ん。赤い瞳に合わせた真紅のドレスもいいけど、紫の髪に合わせてブルー系、いえイエロー系かしら? ああん! 雪のように白い肌に映えるピンクも捨てがたいわぁ!!」
野太い声を上げて体をくねらせる目の前の大柄な女性。彼女こそがくだんの演劇部の部長さんらしいのだが、私は小一時間彼女によって着せかえ人形にされていた。
「あのー、私は動きやすければ別になんでも……」
「ダメよっ! 舞踏会に出る女にとって、ドレス選びは命そのものよ!! いい加減な真似は許されないわっ!!」
「はっ、はいっ!!」
部長さんのあまりの剣幕にビビり、大人しく引き下がる。
……そっか命か。命なら時間掛かるのは仕方ないな。
「副会長さん、次はこれを着てみて」
「はい! もぉなんでも着ますとも!!」
そんな問答を挟みつつ、どれくらいの時間が経っただろうか……。
ついに部長さんが一着のドレスを選び取った。
「これよぉ! これしかないわっ!!」
――それからのことはあっという間だった。
体を剥かれ、揉まれ、締め上げられ、顔は剃られ、塗りたくられ、おまけに髪をひっつめられ。
それはそれは何か妖術でも使ったかのような早業であった。
……やられる方としては堪ったものではないが。
「素晴らしい! 素晴らしいわ……!!」
そう言って汗だくの額を拭いながら、部長さんが私の前に全身鏡を持ってくる。
そこに映ったのは――。
「えぇ……」
綺麗に編み込まれて結い上げられた紫の髪に、化粧を施されていつも以上に大きくなって見える赤い瞳。唇にも赤い紅が塗られていて。
いつもの自分ではない、大人びた表情の私がそこにはいた。
「すごい……」
「うふふ。気に入ったかしら? 髪に合わせた紫のドレスの裾が、まるで花びらのように折り重なっているでしょう? 上から見るとドレス自体が一輪の花のように見えるデザインなのよ」
鏡をまじまじと覗き込む私に微笑んで、部長さんが説明をしてくれる。
確かに派手過ぎない落ち着いた色合いの紫のドレスも、ドレスに合わせた銀色のヒールと髪飾りも、全てが品良くまとまっており、施された化粧を引き立てていた。
私をここまで大人な女に仕上げるとは。朱音ちゃんの言う通り、この部長さんのメイク技術は確かに相当なものらしい。
「まふゆちゃーん、どう? 入ってもいい?」
「!」
と、そこで部屋の外から朱音ちゃんの声がしたので「大丈夫」と応じる。
するとすぐに扉が開き、その瞬間私は歓喜した。
