「彼女には文化祭運営に関する全てを担当してもらいました。器材班と一緒に音響機器の使い方を学んだり、広報班と一緒に看板を作ったり、企画班と一緒に進行用の台本を書いたり。本当に多くのことをやってくれて、会長として至らない私を支えてもらい、感謝しております」
「…………」
やっぱりこういうのは照れるなぁ。夜鳥くんと雨美くん、内心笑って正直すまんかった。どうか私のことは揶揄わないでください。
「……実は私は今まで学校行事に参加したことはありませんでした。一月前に彼女が私を探しに来なければ、きっと私は今日も執事服を着てここに立つことはなく、保健室でひたすら無為に過ごしていたことでしょう」
――――え!?
こんな大勢の前でいきなり何を言い出すのか。
思わず九条くんを凝視すれば、観客席を向いていた筈の九条くんも、体をこちらに向けて私を見ていた。
「っ」
離れたはずの私達の視線が再び交わり合う。
「だからこそ、雪守さんにちゃんと言いたいんだ。あの時俺を探してくれて、俺の世界を変えてくれてありがとう」
「――――……っ!!?」
目を見開き固まる私をよそに、九条くんが観客席へと向き直る。
「以上で私からの挨拶は終わります。ご清聴ありがとうございました」
締めの挨拶をして、きっちりと綺麗過ぎるお辞儀をした九条くんは、そのまま固まったままの私や雨美くん、夜鳥くんの前を通り過ぎ、一人さっさとステージから降りてその場を後にする。
そうして完全に九条くんの姿が見えなくなった後、ようやく観客達も我に返ったように、パチパチとどこか気の抜けたような拍手が始まった。
「え、えーと、九条会長と生徒会のみなさんでしたー! ありがとぉー!!」
司会の取り繕ったような明るい声にお辞儀を返しながらも、私はこみ上げる恥ずかしさに打ち震えていた。
まさに言い逃げ。
なんだこの空気! なんだその挨拶!? いや途中から挨拶じゃなくなってるじゃん!!
張本人がいの一番に去るんじゃねぇ!!
こんな、こんな……不格好な姿よりも何十倍も恥ずかしい思いをさせて、一体どういうつもりなんだ!? 実はバカなのか、あの男は!!?
私は怒っているんだ。後で文句言わねば。
……そう、私は怒っているんだ。
だからいい加減、心臓鎮まれ。
◇
――こうして文化祭における生徒会のメインイベントは無事に終了した。いや無事なのかは大いに疑問だが、とにかく終了した。
この一件によって、ますます女子達の私を見る目が厳しくなった気がするが、私は断じて悪くないっ!!
