「神琴さま……、執事服も素敵……」
「水輝くんと雷護くんも似合ってるぅ〜」
せめてもの救いは、観客が九条くん達の珍しい執事姿に夢中で、誰も私の格好なんて眼中にも無いことだろうか。
誰も見てない、誰も見てないから大丈夫と念じて、自分を励ます。
「さぁっ! ではではお待たせ致しましたみなさん! 生徒会長からの挨拶を、九条神琴さんにお願いしたいと思いまーす! 九条会長、お願いしますっ!!」
「はい」
司会に名を呼ばれ、九条くんが演台の前へと歩いていく。
それを見届け、私と雨美くんと夜鳥くんは、九条くんの少し後ろに横一列で等間隔に並ぶ。打ち合わせでは九条くんが挨拶した後に、私達の紹介も軽くしてくれることになっているのだ。
「――――」
騒がしかった観客もシンっと静まり、みんなが九条くんの言葉を待つ。
それに対してマイクの準備が整った九条くんは視線を観客に向け、ゆっくりと話出した。
「みなさんこんにちは。日ノ本高等学校生徒会長の九条神琴です。今日は多くの方々が私達の文化祭へと足を運んでくださり、本当にありがとうございます」
そこで九条くんは綺麗なお辞儀をし、話を続ける。
「今日まで我々全校生徒は一丸となり、文化祭の準備を進めて参りました。中でも今回は、企画に運営に交渉にと、多岐に渡り熱心に取り組んでくれた生徒会のメンバーを紹介したいと思います。まずは会計、夜鳥雷護」
名前を呼ばれた夜鳥くんは、私達よりも軽く一歩前に出てお辞儀をする。
「彼には主に文化祭の予算管理と申請書や借用書の確認受理全般を担ってもらいました。この文化祭が盛大で華やかに行うことが出来たのも、彼の予算管理の賜物だと思っております。……それと、これは個人的な感想ですが」
そこで一旦言葉を切った九条くんは、夜鳥くんの方をチラリと見遣った。
「彼は一見荒っぽく見えがちですが、その実とても丁寧な仕事をしてくれます。考えたことをすぐに口走るのは悪い癖だとは思いますが、彼の真っ直ぐなところはとても好ましく感じています」
九条くんの思いがけない言葉に、夜鳥くんは目を見開いてポカンとし、そしてジワジワと目元が赤く染っていくのが後ろからでもすぐに分かった。
ならば正面から夜鳥くんの表情を見ている観客が気づくのは当然のことだろう。
「赤くなってる! 可愛いぃー!!」
「うるせぇ!!」
はやし立てる声に、真っ赤な顔のまま怒鳴り返していた。
ふふふ。照れるな照れるな。後でこのネタで揶揄ってやろうと私は内心ほくそ笑む。
