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「うぎゃああああっ!!?」
死ぬ! 別の意味で死ぬ!!
ゴウゴウと轟音を響かせながら、木綿先生が空を一直線にかっ飛ばす。乗っている時間はまだほんの数十秒だろうが、恐ろしく長く感じる。
なにせ顔面に風圧がモロに直撃するのだ。定員オーバーの為ぎゅうぎゅうだし、乗り心地も死ぬほど悪い。木綿先生には申し訳ないが、こういうことは二度とごめん被りたい。
「ううぅ……!」
気を紛らわせる為にそんなことを考えながら、私は酷い車酔いで込み上げる吐き気を必死で我慢した。
そして――。
「おーっとぉ! 空飛ぶ方舟ならぬ、空飛ぶ一反木綿に乗った生徒会一行が到着だぁーっ!!」
瞬間、ワッ!! と割れんばかりの歓声が私の耳をつんざく。
そのままステージに降り立って観客席を見渡せば、予想以上の観客の数に思わず圧倒された。
「……ではみなさん頑張ってください。僕は休憩してます……」
ちなみに人型に戻った木綿先生はそう言い残し、ヨロヨロと腰を押さえながらステージ裏へと消えて行った。
乗り心地は最悪だったけど、間に合ったのは間違いなく先生のお陰だ。後でお礼を言っておこう。
「わぁー」
しかし改めてじっくりと観客を観察すれば、九条くんをはじめ、雨美くんや夜鳥くんの名前の入ったウチワやハッピを着ている人が多くいるのが見てとれた。さながらアイドルのコンサート会場のようである。
なるほど。妖怪は美形な者が多く、我が生徒会の面子もその例に漏れず系統は違うが全員美形揃いだ。それぞれのファンが集まったからこその、この人数かと納得する。
「さーあっ! お待ちかねの生徒会役員のみなさんに来ていただきましたぁーっ!! どうぞ盛大な拍手をお願いしますっ!!」
軽快な司会の声に合わせて、大きな拍手がステージに立つ私達を包む。そして司会がこちらを一瞥して、何やら首を傾げた。
ん? なんだ??
「おやおや? みなさんお揃いの執事服にメイド服を着てますねぇ! 観客席のみなさーん!! これはファンには堪らないレアショットですよーっ!!」
司会の声に観客達も「カッコいー!」などと黄色い歓声が上がる。
「あ」
そこに至ってようやく私も気がついた。私達全員、メイド服と執事服のままだと。
完璧に執事服を着こなしている九条くん達はいい。問題は私である。
メイド服にぶかぶかのジャケットを羽織った状態の、なんとも不格好な姿だ。こんな姿を大勢の前に晒してしまっていることに居た堪れなさを感じる。
ああ……穴があったら入りたい。
